短志緒


「梨香、小さくなった?」

ポン、と乗せられた手。

「あんたがデカくなったのよ」

その手を振り払うために手首を掴み、その太さに驚く。

よく見ると手自体、ゴツゴツ骨っぽくて厚い。

私の手より、ふた回りくらい大きかった。

ちょっと前までガリガリでヒョロヒョロだった健吾は、完全に男になってしまっている。

一体誰が健吾をこんな身体にしたの?

あの陽気なお母さん?

それとも今まで付き合ってきた女たち?

私は男になった健吾に魅せられた。

それは別に恋愛対象としてではなく、人間の男という生き物はこのように成長していくのだという実感と感動だったと思う。

それからというもの、健吾を見る度に男を感じずにはいられなくなった。

彼の女の噂を聞く度に、あの手がどう女を扱っているのかが気になった。

彼とは毎日何かしら話はするけれど、その手が私に触れることはほとんどない。

それがなんとなく寂しかった。