わがままで自己中、だけど少女のような夢を見る彼女。
「わかったよ。景色のいいところ探すし、小さくてもダイヤの付いてる婚約指輪を準備する」
彼女の舌を唸らせる料理でもてなし、
彼女の目を釘付けにする指輪を贈り、
彼女の耳を虜にする甘い言葉で愛を誓い、
彼女の体を満足させる夜にする。
そしてついでにダイヤのネックレスも俺が贈ったものと取り替えてもらおう。
俺の全てを捧げよう。
二年以上気持ちに気付かなかった鈍感な君でも
こんなに愛されているのだと実感できるように。
「だから……」
「だから?」
「もう浮気はしないでね」
彼女はちょっと拗ねた顔をして、だけど手にはしっかり指輪が握られていた。
彼女がなぜ俺のプロポーズを受け入れたのかは、
未だにわからない。
それから話がとんとん拍子に進みすぎて、じっくり確認する暇もなかった。
気付けば挙式、披露宴を終え、二次会もそろそろ終わろうという頃。
「新婦の奈緒さんより、新郎の俊孝さんにお手紙がありまーす」
司会のこの声で我に帰った。



