短志緒


男なら誰でも自分に好意を寄せると本気で思っている彼女は、

俺が常に見せてきた好意を当然のものだとみなし、

流し続けていた。

俺の気持ちなんて考えたこともなかったに違いない。

悲しいかな俺を愛しく思うこともなかったはずだ。

「ごめん。なんか、勢いで結婚してとか言っちゃったけど、返事は聞かなくてもわかってるから」

彼女の口から「嫌よ」なんて聞くと、さすがの俺もへこんでしまう。

「……あっそ」

彼女は呆れた顔をしていた。

「じゃ、俺帰るね」

「そうね。で、次はいつ来るの?」

「え?」

次って、次があるのか?

「あんなんじゃダメよ。やり直し」

彼女は腕を組み、強気な視線を送る。

「あんたね、ホテルであたしの話、ちゃんと聞いてたの?」

「結婚したいっていう話? 聞いてたよ」

「だったら、あたしがどうしてほしいかわかるでしょ。もっとちゃんとプロポーズして」

「ちゃんとって、毎熊さんの希望通りにってこと?」

「そうよ。上手にできたら、結婚してあげる」