短志緒


「あのさ」

「何よ」

二日酔いで不機嫌な彼女はキッと睨みを効かせている。

そんな顔をしていても、俺は君が好きなんだ。

だから。

「俺と結婚して」

俺たちは彼氏彼女と言える関係ではなかったけれど、君の言う彼氏とやらよりよっぽど気心の知れた仲だったはずだ。

君がわがままであること、自己中心的で腹黒くて自信過剰であること、その全てを受け入れる。

そしてそれができるのは、恐らく世界中のどこを探したって、俺しかいない。

そろそろ気付けよ。

君には俺しかいないんだ。

彼女は驚きのあまり固まってしまっていた。

もどかしくなって、小さくて細い手に指輪を握らせる。

すると大きな目がみるみる涙で潤んでいった。

「泣かないでよ」

「泣いてない」

彼女は潤んだ目のまま再び俺を睨み付けた。