短志緒


「マスター、お会計」

「え? 彼女の分ですか?」

「はい。こいつ、連れて帰ります」

「いいんですか?」

「俺の女なんで」

ベロベロに酔った彼女を無理矢理立たせ、店を出た。

立たせてみたものの、半分眠った状態で俺にもたれ、歩くというよりは引きずられている。

さすがに電車には乗せられない。

車内で吐かれると面倒だ。

となると、連れて行ける場所はもうあそこしかない。

「気持ち悪い」

しか言わない彼女にビクビクしながら、いつものホテルへ入る。

何とかベッドに誘導すると、そのまま何秒と待たずに眠りについた。

やれやれ、最後まで世話の焼ける女だ。

冷えないようにシーツをかけてやると、いつものように小さく丸まった。

「ったく、バカ女」

顔にかかった前髪をかき上げると、綺麗な顔が露になる。

間抜けな寝顔さえ美しい。

そしてとてもいとおしい。

俺は少しだけ迷ったけれど、酒代もホテル代も出したのだからと思って、一度だけキスをした。