短志緒


隣のカウンターに頭を乗せて眠っている女のフォルムを確認する。

長くてストレートの髪。

無駄に細い手足。

俺は座るのをやめ、回り込んで女の顔を確認した。

「毎熊さん?」

彼女だった。

「お知り合いですか?」

マスターが困った顔をこちらに向けた。

「ええ、まあ。よく知ってる女です」

「どうやらやけ酒しに来られたようで、ご覧の通りに」

体調が悪いわけではなかったのか。

よっぽど俺と一緒にいるのが嫌だったのだろう。

顔を見ると涙の跡がある。

わがまま自己中な彼女も泣くことがあるのかと、胸がギュッと締め付けられる。

「毎熊さん」

体を揺すっても不機嫌に身を捩るだけ。

「毎熊さんってば」

細い腕を振りかぶり、弱々しく抵抗する。

わがまま女。

良い年こいて、こんなところで迷惑かけるなよ。