彼女の送別会は彼女自身の体調不良を理由に、一次会でお開きになった。
別れの花束を持って逃げるように去って行った彼女。
声を掛けさせてももらえなかった。
主役を欠いたが飲み足りなかった同僚たちは、彼女と上司を見送った後仲間内だけで飲み直す。
いつもはそんな場所に彼女がいたことを思い出すと、自然と酒が進んでいた。
仲間だけの二次会を終えて、帰路につく。
結構飲んだが飲み足りなかった俺は、何となくいつも彼女と入っていたラブホのある駅に降り立った。
思い出に浸りたいが、一人でラブホテルに入るわけにはいかない。
誘える女だっていない。
ホテル街の北口ではなく、繁華街の南口へ。
週に一度は立ち寄る、一応行きつけと言える店へ足を向けた。
「いらっしゃいませ」
聞き慣れたマスターの声に会釈をして、カウンターへ。
いつも座る席は、女物のバッグと花束に取られていた。
……ん? 花束?



