彼女が俺を頼る時は、決まってその彼氏とやらに不満を抱いた時だった。

どうやら彼は彼女を身体的に満足させることができないらしい。

浮気されるようなしょうもない男、

そんな男のために甲斐甲斐しく猫をかぶり続ける彼女。

続くわけがないと思っていたが、彼女は案外忍耐強かった。

いや、俺がその不満を解消させていたのだが。

自業自得だというのも理解している。

彼氏ができたとにっこり笑ったその日から約２年。

「彼氏と結婚したい」

彼女はこんなことを言うようになってしまった。

正直、焦った。

自然に別れてしまうのを待っていたのに。

彼女にとって俺、沢田俊孝という男は同僚かつ浮気相手であり、

それ以下でもそれ以上でもなかったのだ。

腹は立つけど近くにいたい。

求められれば応えたい。

彼女にとって俺はただの浮気相手でしかないのかもしれないが、

俺にとって彼女は唯一無二の恋人なのだから。

俺から言わせれば、彼氏とやらの方が浮気相手だ。

……なんて強がって虚しくなる。