彼女、毎熊奈緒はその彼氏とやらに心底惚れているようだった。

「来月、彼氏の誕生日なんだ。プレゼントは何がいいと思う?」

聞き飽きた惚気と無邪気な相談。

だけどそれがラブホテルのベッドの上であるから始末が悪い。

そう、俺はセフレから浮気相手へと格下げされたのだ。

「何でも良いんじゃないの?」

それに応える自分も大概お人好しだと自覚している。

好きならそう言えば良いものを、ここで言ってしまっては関係が終わるのではないかと恐れている。

彼氏なんて作ってしまう前に、ちゃんと付き合えば良かったではないか、と思うかもしれない。

しかし告白したところで彼女は首を縦には振らなかっただろう。

俺は彼女の望む顔が良くて金持ちな男ではなかった。

「ちゃんと考えてよ。男の人って何が欲しいの?」

理不尽に怒りだす彼女。

それくらい自分で何とかひねり出せと言えないのは惚れた弱みである。

「ねー、沢田くん」

彼女が俺を呼べば、それを無視することなんで到底できないのだ。