俺は静かに段を降りて、彼女に近づく。

倒れないように必死な彼女は俺に気づいていないようだった。

段ボール箱をグッと持ち上げる。

結構重いな。

本当に危なっかしい。

初めて間近で見た彼女の顔は、

とても驚いた表情をしていた。

「丸山くん?」

俺は初めて呼ばれた名前に照れて、

何も言えずに階段を上った。

「ありがとう、丸山くん」

俺だけに向けられた彼女の笑顔。

これで荷物を持っていなければ抱き締めていたかもしれない。

彼女が発した言葉は何気ない日常会話だけれど、

物音をよく反射する階段と

俺の心に響いた。