短志緒


ジーンズのポケットに手を入れ、

何かを取り出した。

「これ、買いたくて。遅番たくさんやってたんだ」

紅色のベルベットの小箱を手渡され、

私の涙腺は更に緩くなる。

震える手で箱を開けば中の石が木漏れ日を美しく反射する。

「エンゲージリング……?」

「うん」

「ほんまに? ほんまにあたしと結婚するん?」

「サキが、してくれるなら」

あたしは小箱を閉じて、ぎゅっと握りしめたままレイヤに飛び付いた。

そして滝に負けない大きな声で

「する! するよ!」

そう叫んで、力一杯レイヤを抱き締めた。

優しく抱き返してくれるレイヤ。

幸せすぎて頭がおかしくなりそうだ。

今なら自らこの清流に飛び込んだっていい。

そう思えるくらいに。