短志緒


「何なん? 今更そんなシミっぽい話して。何が言いたいねん」

捲し立てるとシュンとした。

可愛くない態度ばかりとってごめんね。

可愛くない表情ばかりでごめんね。

最後のデートくらい素直に笑えよ、自分。

「俺さ、親も兄弟も親戚もいないけど、俺なりにあったかい家庭っていうのを作りたいと思ってる」

「……そう」

へぇ、そこまで話が進んでるなんて。

新しい飼い主はきっと家庭的な女なんだ。

あたしとは違って、温かい家庭で育った温かい女なんだ。

「だから、サキ」

別れようって言うんやろ?

お前とはもう会わないとか言うんやろ?

あたしは全身に力を込めて、その言葉に堪える準備をした。



「俺と作ろう。あったかい家庭」