短志緒


あの時みたいに二人並んで深呼吸。

これから訪れるであろう重苦しい雰囲気に向けて、

マイナスイオンをたっぷり吸い込んでおく。

ザバザバと落ち続ける大量の水。

この場所はあの時から全く変わらないのに、

あたしたちはこれから大きな変化を迎える。

「俺さー、この中に突き落とされたんだよなー」

「せやなー」

「言っとくけど、超冷たかったんだからな。氷入ってんのかってくらい」

「うるさいなー。もう一回突き落としたろか」

「絶対やだ」

レイヤは思い出ばかり語って、なかなか本題に入ろうとしない。

あたしたちのギスギスした雰囲気を、

滝のマイナスイオンが浄化しているようだった。