短志緒


目的地までの道は、どこも見たことのある景色だった。

だんだん行き先の予想がついてきて、

胸がいっぱいになってくる。

レイヤが向かっているのは、あの時に行った滝だ。

やさぐれていたレイヤを水の中に突き落とした感覚や、

その後に食べたマックの味、

そして行き当たりばったりで入ったラブホテルの広いベッド、

そこで触れ合った時のレイヤの表情が蘇る。

思い出深いあの場所で別れ話をするつもりなんだろうか。

「着いた。サキ、行こう」

「……うん」

駐車場から滝へ。

その間あたしたちは一言も喋らなかった。

レイヤが固い表情をしているから、

あたしは何も言えなかった。