短志緒


俺は何も言えなかった。

口を開くと涙が零れてしまいそうだったからだ。

これから彼女を守っていく者として、涙なんか見せられない。

代わりに深く深く頭を下げた。

そして全身に渾身の力を込めて、

ただ一言だけ。

「ありがとう、ございます」

俺の掠れた声でも彼にだけはちゃんと聞こえるように。

見たこともない神様なんかより先に、

あなたに誓います。

必ず彼女を幸せにします。

全霊をかけて守ります。

あなたが今までやってきたように、

いや、それ以上の愛を注ぎます。



結局涙は零れてしまった。



「お父さん」