ただ、驚いた。

俊輔のことを恋愛対象として見たことはなかったし、それは俊輔も同じだと思っていた。

普通男の子は好きな女の子にいいところを見せようとするものだと思う。

俊輔は情けない姿を見せるばかりで、私の前でいいところを見せようとしたり、格好つけてみたり、たぶん、したことがない。

変な雰囲気になって他の飲み仲間メンバーに気を使わせたくない。

変に「考える」などと言って微妙な雰囲気になるくらいなら、キッパリ断ってリセットしたほうがいい。

私は冷静にそう考えて、正直に言った。

「気持ちは嬉しいけど、私、俊輔のことをそんなふうに見たことない」

私の言葉を聞いて、俊輔はほんの一瞬だけ傷ついた顔をした。

それを見た私の心がズキンと痛む。

俊輔は、すぐにいつもの頼りない笑顔を浮かべた。

「そっか……わかった」

「ごめんね」

謝ると、また胸が痛くなった。

それと同時に、怒りに似た感情がわく。

どうしてもっと粘らないの?

本当に好きなら、食い下がればいいのに。

そうすれば、もしかしたら……。

「ううん。時間くれてありがと。今日バイトだろ?」

「うん」

「頑張って」

「ありがと」

私は俊輔を振ったのに、怒りを覚えるのは理不尽だとわかっている。

俊輔だって、仲間内で妙な雰囲気になるのは避けたかったに決まっている。

だからあっさり引き下がったのだ……と。

決して私を簡単に諦めたわけではない……と。

そう思いたかった。