「美味しいなら、もっと美味しそうに食べなさいよ」

「だって真奈美の料理が美味いとは思わなかったから、ビックリして」

「はぁー? 超失礼!」

そうだった。

こいつは勉強こそできないが、その他のセンスは抜群なのだった。

「まったく、参ったよ」

「なによ」

「胃袋掴まれた」

にっこり笑った彼女は、これからきっともっと美味いものを作るようになるだろう。

そんな彼女に勝てる部分が知力と男なりの体力だけでは、そろそろ俺の立場が無いのではないか。

「ねぇ、瑛士」

「ん?」

「私今、すごく幸せ」

嬉しそうに微笑む彼女に、胃袋のみならず心臓まで鷲掴みにされている。

彼女の前では無力。

そう言った親友の言葉は正しいようだ。

素直になれない今は、彼に授かったこの言葉を捧げよう。

「俺も」

たっぷりと天の邪鬼な愛を込めて。




fin.