短志緒


うちのベッドはクイーンサイズである。

いつか家族ができて、子供が産まれたら、川の字になって寝転がれるようにと思ってこのサイズにした。

今はまだ無駄に広いこのベッドで、普段は一人で眠っている。

真奈美が来た時も、広く使わず、二人くっついて使うことが多い。

このように。

「ちょっと瑛士、くすぐったいよ」

「そう?」

真奈美の肌は触ると病み付きになるほど心地いい。

つるつるしていて、吸い付くような肌触り。

「ね、待って。今日は、ダメ」

「待てない」

ブラッディウィークならこの間終わったはず。

彼女に触れる手は止まらない。

「ほんと、お願い瑛士」

「無理」

「瑛士!」

彼女の本気を悟って、手を止める。

昂った気持ちを押さえ付けられると、なんともいえないフラストレーションが身体中を駆け巡る。

この状態から気分を落ち着けるのは、わりと大変だ。

彼女に抱きついたまま、腹に力を込めて数回深呼吸する。

久々に会って、やっと触れられるのに、なぜ。

生殺しだ。

会う機会を制限され、それでも会いやすいよう環境を整えようとすれば断られ。

少しでも素直になるために”俺も“を使うチャンスさえ拒否されるのか。

ああ、ダメだ。

なんか、心が折れたかも。

俺はベッドから降りた。

「瑛士!」

俺が怒ったと思ったのか、焦った真奈美が追ってこようとする。

「来るな」

「だって」

「頭冷やして身体治めてくるだけだから」

「瑛士……ごめんね」

それはどういう意味の謝罪?

断ったことに対して?

それとも、もう気持ちがないことに対して?

「真奈美」

「なに?」

「別れるか」