親父は黙って酒を煽った。
俺の言葉を聞いて何を考えているのか皆目検討もつかなかった。
彼がわざわざ泊まり込みでこっちまで来たのは、
恐らく彼女に直接俺との結婚を諦めるよう説得するためだ。
聞き分けの良いという彼女は話を聞いて結婚をやめると言ったのだろうか。
だからここに来ないのだろうか。
不安が募る。
今彼女はどこにいるのだろう。
どんな顔をしているのだろう。
会いたい。
顔が見たい。
声が聞きたい。
抱き締めたい。
ポケットの外側から携帯に触れる。
「ちょっとだけ、失礼します」
俺はペコリと頭を下げて、店の裏へ。
履歴から彼女に発信した。



