真奈美は変わらずコットンを丁寧に肌に滑らせながら膨れてみせる。
「そうだよどうせバカだもん。学ぶ姿勢があるだけマシでしょ」
「学んだとこで身に付くのかよ」
「うるさいなー。瑛士もさっさとシャワー浴びれてくれば?」
そう言って使い終わったコットンを投げつけてきた。
コットンは俺の頬にぺしゃりと貼り付く。
「そうするわ」
そのコットンを指でつまんで放る。
テーブル脇のゴミ箱にナイスゴール。
真奈美はさっきのとは別の液体をコットンに含ませている。
「で、中東ってどこ?」
「アラブとかサウジとかトルコとか、あの辺りだよ」
「……な、なるほどね」
「お前、絶対わかってねーだろ」
「ふん! さっさとシャワー行ってこい!」
「へいへい」
俺たちは元々こういう関係だ。
俺はそれを楽しいと思っているのだが、もしかしたら真奈美は違うのかもしれない。
さっきコットンの貼り付いた頬が、やけにしっとりしている。
念入りに肌の手入れをしたり、こだわって髪の手入れをしたり。
毎日女を磨いている真奈美は、我が恋人ながらまあまあキレイだ。
姿勢もよく、いつもいい匂いがする。
もし俺でなければ、好きだよキレイだよ可愛いよと、そういう言葉をかけてもらえるのだろう。
普通に考えれば、バカだアホだと罵られる男の家なんかに、入り浸ろうとは思わない、か。



