短志緒


親父は少しムキになった様子だった。

俺が諦めた方が、そっちにとっては都合が良いんじゃないのか。

「君の愛もその程度だ」

ふん、と息を漏らし、氷の音を立てて大きく一口。

その程度とは失礼な。

「彼女がやめたいのに無理矢理結婚なんてできないでしょう。これからの一生を決める大事なことなのに、やめたいという本人の意思を無視してまで迫れません」

俺はあくまで冷静にかつ穏やかに、だけどちゃんと思ったことを言った。

「彼女には幸せであってほしい。だから、彼女が望まない結婚なんてする意味がない」

親父はちゃんと聞いてくれる。

だから、何度でも話し合う。

「例え俺にどれだけ幸せにする自信があったとしても、彼女にそう思われなければ何の意味もないんです」

本音で、話し合う。