短志緒


「俺は、お父さんが結婚を反対される気持ちはわかっているつもりです」

こんな言葉は生意気だったろうか。

親父は黙って視線をグラスに向けていた。

「仕事は不健康だし胡散臭いし」

否定も肯定もしない親父。

「お父さんはきっと、俺みたいな男ではなく、安定した昼の仕事に就いている男性の方が安心でしょうし」

だけど話はちゃんと聞いてくれている。

「だからこそ、認めてもらえるまで何年かかっても構わないと思っています」

初めて彼に会ってから、この時すでに3年。

俺は27歳。

彼女は23歳だった。

俺は適齢期に差し掛かったが彼女はまだまだ若い。

仕事も始めたばかりだ。

焦らず、気長に。

人生はきっと長い。

「懲りん男だ」

親父はぶっきらぼうにそう言ってグラスを空けた。