「出れば?あたしに言えない相手とか……」



そう言ったら、伊織は諦めたように、ケータイをあたしの目の前の机の上に置いた。



そこには……。



えっ、なんで!?



“松本”って出ていて、あたしは激しく動揺した。



「お前に…言ってなかったことがある。アイツに……彼氏のフリしてくれって頼まれてて……」



彼氏のフリ……?



なに……それ……。









「で、その名残っつーか……。断ってんだけど、なんか…俺じゃなきゃ、みたく言われてて……。

彩花が嫌だろうし、彩花が嫌じゃなきゃ、今ここでハッキリ断るから」



そう言って伊織は、もう一度ケータイを手に取った。