「人工呼吸してくれたって言ってたけど…したことあるの?」



「えっ……あるよ。水泳教室でそういう実習があるんだ…」




「実習?」



「そっ、そうだよ。溺れた場合の対処法を一応習うんだ…もちろんマネキンで練習だけど、実際にできるかどうか不安だったし……あのときは必死だった。

あのとき俺が助けてなかったら……彩花はココにいなかったかもしれないのに。

そんな俺のことを、疑うの?」




ズキッ……。



そんな風に言われたら、疑ってるあたしが悪い気がしてくる。



朝野くんがあたしにウソついてるのは薄々感じるけど……



そこに至る経緯がよくわからない。



伊織はジャージだけを貸してくれたもしれないし、助けてくれたのは朝野くんで……。



だけど……



助けてくれたのが朝野くんだとしても……



あたしの気持ちは……



もう、ブれない。












一番大切な人が誰だっていうことは…



このあたしが、一番よくわかってる……。