「そんな顔すんなよ……迷うだろ?

俺だって、彩花もいいなって思うけど……その子のことも、気になるから」




ホントは、そんなヤツなんていない。




お前が迷ってる間……俺がどれだけ辛かったか、わかってる?




お前だって……同じ苦しみを味わえばいい。




人と同じ立場になってやっと、その苦しみが理解できるはずだから……。










「また、キス……する?俺はいつでも大歓迎」




彩花の髪に手を伸ばすと、パシッと思いっきり頬をたたかれた。




痛ぇ……。




彩花は無言で俺をニラみ上げると、




雨も止み、すっかり静けさを取り戻した夜の闇の中へ……




そのまま飛びだしていった。