俺はすぐに、側で放心状態になっている朝野を見た。


「おいっ、そこの上着取ってよこせ!」


「あっ……ああっ」


朝野はやっと我に返り、すぐに俺がさっき脱ぎすてたジャージを拾って、俺に手渡す。


俺は彩花の体からジャージを脱がせ、自分のジャージを、彩花に巻き付けるようにしてかぶせた。


ギュッと抱きしめるけど、彩花は、ただガタガタと震えているだけ。


「朝野…テメェ」  



「俺が落としたんじゃないから!たまたま足を踏みはずして…」


朝野は焦って弁解してるけど、俺が聞きたかったのはそんなくだらないことじゃない。


「は?水泳やってんじゃねーのかよ!なんですぐ助けなかった!?」


「あっ…そういうことか。だってさ、溺れてる人を助けるのって、難しいんだよ。下手したら自分も…」


だからさ、コイツはこーいうヤツなんだよ。


なのに、彩花は……。