「だから…」


「……あっそ。別にさー…俺、お前に本気じゃなかったし」


「……伊織?」


「男、いたことないもんな?初めてのときに恥かかねーように、

俺がしこんでやろーと思ってたけど…触らせてもくんねぇし」


「なに……それ」


今まで俺に申し訳なさそうにしていた彩花の顔が、困惑ぎみの表情に変わる。








「キスだけで身動き取れなくなって?どんだけ経験ないんだよ、今どきそんな女いないって。

付き合ったことなくても、キスぐらいフツーしてるから」


…そーいう女だから、


俺は彩花を好きになった。


ちょっと甘い言葉を囁いただけでガチガチになって…


少し手が触れただけで、そこから熱を帯びたように、耳の先まで一気に真っ赤になる。


…そんな彩花が、


かわいくて、愛おしくて、


仕方がなかった……。