む…ムカつく。


言い逃げされると、かなり気分が悪い。


いつもケンカになるけど、お互い言いたいこと言ってスッキリしてたから、


こんな風に中途半端にされると、ホント消化不良なんだけど。


それに、いつもなら前日のケンカなんてなかったかのように、普通に話しかけてくる伊織が、


珍しく、昨日のことをまだ怒ってるし。


…まぁ、そーだよね。


3度目はないとか言ってたし…。








あたしも…どうしたいんだろ。


教室に戻ると、友達があたしに群がってきた。


「彩花、どうだった?」


「わかんない。伊織も詳しく教えてくれないし」


「そうなんだ…他の子の話だと、伊織くんが一方的に朝野くんを殴ったみたいだよ。

朝野くんかわいそう。ケンカとかしなそうだし、きっとよけれなかったよね…」


伊織は小学生の頃からよく友達とケンカしてたし、ケンカ慣れしてることもあって、


どの程度の力加減にすればケガさせるかってことをわかってるから、そんなに思いっきりは殴ってないはず。


だけどカッとなりやすいし、言葉より先に手が出るタイプだから、殴られた朝野くんはビックリしたよね…。


朝野くんは、ケンカとは無縁のイメージだし。