あいつは気に入らねえ。

 唯斗は一段と強い力で小石を蹴りあげた。

しかもあの外法師め、外道非道と自分で言っておきながら、

そのわりには義理人情に篤かったりするのだ。

ますます気に入らぬ。

 それでも彼女の前で笑顔を張り付けていられた己を讃えてやりたいほどに、だ。

 学校を夕日の色が包み込んでも、唯斗は学校にとどまっていた。

一部の妖かしどもは、人間の怨念を食らうため、人の多いところに集まる習性があるという。

 だから、がっこうにも時たま姿を現すことがある。

そこを、狙い打つ。

それらは唯斗の稼業と言うわけでもないが、彼は修行と言うことで、

ここの有害になりかねぬ妖かしを伏せている。

 ――それを一度あの外法師めを試すために話してみたが、もちろん、あの外法師は、

「おめえよぅ、妖かしをなめてんのかよ。

修行なんていう、本気を思わせない理由があるところで陰陽師の資格ゼロだぜえ。

妖かしが可哀想になる。

戦うなら本気で戦いやがれ、このしょんべん小僧めが」

 と、ひどい有様に言われた。

 妖怪はお前のほうだろうが、と言ってやりたくなる。

《くけけっ、だいぶんご立腹にございますねえ》

「うるせー、声かけんなよ」

 上空から式神の―――骨翼怨龍が卑屈げな含み笑いで言ったので、唯斗がたしなめる。

怨龍が翼を動かすたびに、かたりかたりと硬質でかつ軽快な音が鳴る。

 骨翼怨龍―――全長は五メートルばかり、三つの首を持つ白骨の龍の姿をしている。

八岐大蛇の死骸を長きにわたり放置した結果ともいうべき、不気味な姿である。

《いいや、唯斗の旦那ぁ。

あっしも、あの丸っこい外法師は気に入りませんぜえ。

あの外法師が従えておる戦車も、ねえ》

 鬼門法師が従える戦車―――美貌の兵士とグランドパンツァーである。