しかしその笑い顔を見ていると自然と失笑が漏れる。
「おうっとすまねえ、お客さんをそっちのけにしちまってい。
まあ中に入りなせえよ。話、聞くぜ」
《おい、その前に店の中をどうにかすべきではないのか?》
朧蓋翁に言われ、七衛門は忘れていたことをやっと思い出した。
「げっ」
しまったぜ、ちきしょう。
七衛門はひきつった笑みを浮かべて、悪態をつくのだった。
店の中は、実はここのところ散らかり放題である。
その散らかりっぷりときたら、小さな竜巻が家の中に入ってきて、
好き勝手に荒らして去って行ったのではないかと思うほどだ。
「ちょ、ちょいと待ちねえっ」
疾風の速さで少女よりも早く店に駆け込むや、店の中から大量の塵芥が舞い出てきたのだった。
《善は急げと、日頃から言うておったではないか》
残念ながら、朧蓋翁が日頃言っていても、七衛門に至っては馬耳東風なのである。


