わざと開けっ放しにしたベランダの窓とか。
宝田と、付き合うことんなった。目を伏せてそう言った、お前とか。
宝田を引き留めた俺とか、自転車に乗せたこととか。
俺の胴体に回された、ぎゅっと力がこもった、宝田の腕とか。
お前も。君も。俺も。
…多分少しだけ、裏切った。
なぁ、星治。俺さ。
宝田と付き合ったのが、お前じゃなくて、他のダチだったら。
それだったら多分俺、そのダチとは普通に、そのまま仲良かったと思うんだ。
…でも、お前だったから。
誰よりも人のことを先に考えて、俺のことをよく知っているお前だっから。
何言ってるか、わかるか?俺はもう、自分でもよくわかんねーんだけど。
俺は。
…おれは。
「……なぁ」
「ん?」
「…あのさ」
「何だよ」
星治が、何か言いよどみながら、ベランダの柵にもたれている。
いつも真っ直ぐに伸びている背中が、少し丸みを帯びて、描く弧は優しい形をしていて。
「うん……、ははっ」
「…だから何だよ」
すごく優しい、形をしていて。俺は。
「…俺、やっぱ。お前といるの、好きだわ」
……お前のそういうとこ、好きだった。



