俺が知っている星治。知らない星治。
次々とあふれ出す、良いところ。好きなところ。
それは、作ったものじゃなかった。本当に思っているからこそ、こぼれ出てくるもの。
伝わってくる。宝田は本当に、星治のことが好きなんだと。
…そんなことは知っていた。
見ないようにしていただけで、本当は前から知っていたんだ。
星治の後ろに乗った宝田の、ほころんだ幸せそうな顔を。
流れるように目に映る、目印になりそうな赤い看板。
酒屋の自動販売機に、年期の入った蛍光灯がともったコンビニ。
二見のバス停が、もうすぐそばに迫っている。
「…でもきっと、朝海くんの方が知ってるよね」
進み続ける、自転車の車輪。
本当なら星治のいるべき場所が、俺が取って代わった役割が、もうすぐ役目を終える。
肩に宿っていた、優しい温度が、離れた。
「…本郷くん、よく話すんだ。朝海くんのこと」



