宝田は、そんな俺の話を楽しそうに聞いた。
さっきまでの気まずさは消え去って、自転車の前と後ろ。笑い声が飛び交う。
不思議だった。宝田とちゃんと初めて話した内容が、星治のことだなんて。
他のヤツらの前では一言も話したくなかった話題なのに、宝田の前では、スラスラ出てきた。
自分でも、本当に不思議なくらい。
宝田が、星治の話を嬉しそうに聞く。
それは多分、切ないことで。でも同時に、俺は胸のつかえが溶けていくような感覚を、味わっていた。
「…だから、大丈夫だよ」
あはは、と明るい宝田の笑い声に混じって、言った言葉。
宝田の声が、止まる。
背中を震わしていた、空気が止まる。
「大丈夫。星治とは、すぐ仲直りできる」
「………」
「な」
「………うん」
返事の声は、とてもか弱かった。
話に集中していたせいで、慣れない二人乗りの運転の行き先が、少しブレてしまう。
ガコン、と、避けきれずに大きな段差にさしかかってしまった時、体が大きく揺れる。
「うわっ!ごめ───っ、」
不安定になった宝田の体。そこから伸びた手が、肩じゃない。
俺の胴体に、回る。
「─────っ」
「…朝海くん」
息が詰まる。
ぎゅっと、宝田の腕に、力が入る。
「もう一つだけ、聞いてもいい?」



