清らかな星の朝


宝田からこんな風に質問されたのは、初めてかもしれなかった。

面と向かっているわけじゃないこの状況が、かえって良かったのかもしれない。

内心はドキドキしていて、でも、口から出てきたのは、案外普通の声で。


「あー……そうだな。俺は…うん。すぐ謝ったり、できない方だから。相手が謝ってくるか、相手も強情なら、お互いにずっと怒ってる」


スラスラと出てきた言葉は、流れる風によって、後ろの宝田に届く。


「ずっと?」
「ん。ずっとっつっても、長くて二日くらいな。怒ってたこと忘れるから」
「…あははっ、忘れちゃうんだ」
「うん、忘れる。食って寝たらたいてい忘れる」


…だから、星治ともずっとそうだったんだ。

自然と。本当に自然と、口から星治の名前が出ていた。

一度話し始めてしまえば、星治との思い出はたくさんわいて出る。


ゲームのデータ消しやがったとか。

人の大事にしてるバットへこませやがったとか。

宿題見せてくれないとかどんだけケチだよ、とか、なんで先に俺んち上がり込んで俺の分の唐揚げ食べてんだよ、とか。

とにかくたくさん、どうでもいいケンカをした思い出。

その結末は、殴るか、スネを蹴るか。
どうしても根にもって、持ち越してしまった時でも、二日後には元通りだった。

晩に、ベランダに出て、よっ、と星治が言えば、俺もおう、と返した。