店が閉店したのは深夜2時。


ロッカー室で俺はマサキに声を掛けた。


「・・・お前、なんか企んでないか?」
「はぁ?珍しく話しかけてきたと思えば、何それ」


マサキは鏡を見たまま俺の方は一切顔を向けずに言った。


「どうせ、あの子は普通の女子大生なんだから手を引けよ。売上に繋がるような太客でもないだろ」
「№1は余裕だなぁ?」
「あいつを巻き込むなよ」


マサキが嫌味ったらしく言ったことに、俺は珍しく苛立った。
そんな俺に気付いてか、マサキはいつもにも増して勝ち誇ったかのように余裕あるような態度を見せながら言う。


「由麻チャンが勝手に店に来てオレを指名した。それだけのことだろ?」
「・・・・」
「疑ってんの?じゃあはっきりさせようか?今、由麻チャンに電話してさ」


ハッタリじゃない。
俺にはそれくらいわかる。


「別にただの客ならレンには関係ないし、痛くも痒くもないよなぁ?」


そういって乱暴に音を立ててロッカーを閉めるとマサキは帰って行った。


「…何をしようとしてんだよ」


俺は自分の握りしめた拳をロッカーにぶつけることしか出来ずにいた。