その日は突然にやってきた。



「―――君···」

「え?」



家を出て、少し歩いた時に正面からすれ違いざまに声を掛けられた。


男の人なのにキレイな人。
柔らかそうな少し癖のある髪の毛に、色の白い肌。


そんなことよりも。この声、知ってる。
ううん、忘れられない――この音は。



「あ、その。“ウチの”に似てるなぁ···」



どう見ても年上の筈なのに、子供の様なあどけない笑顔は全く下心を感じさせない。
それは声も同じで、嫌悪感どころか好感に近い印象でしかない。



やっとどんな人かわかった時には、恋人どころか奥さんがいるってことがわかって少し落ち込んでる自分がいる。