―――あの声に、恋に落ちた。 『こっちにおいで』 壁が薄い、決して綺麗とは言い難いアパート。 そこに私は一人暮らしをして3カ月目。 夏に差し掛かろうとしているこの時期は、エアコンを点けるまででもない気がして窓を全開にする。 心地のいい、夏の香りがする風が舞い込む。 同時にあの音色も鮮明に私の部屋に入ってくる。