「私もドクロの服を着て、蜂の巣みたいにピアスが開いてる人なんて嫌です」

見てて痛そうだし、今日もトゲトゲの服だから当たりそうで怖い。


「あ?かっこいいだろ。まあ、つまり麻耶ちゃんは亮みたいなヤツがいいってことだろ?」

……聞こえないふりしていいですか。

なんでその流れでサクが出てくるのか分からないし。


「あいつのことすきー?」

鉄さんがバイクの風に負けないように大声を出している。


「聞こえません」

「聞こえませんって聞こえてんじゃん!」


サクのことが好きか嫌いかって?

そんなの愚問だよ。

好きに決まってんじゃん


「あいつのことが好きなら――」

鉄さんがなにかを言ったけど、その声は風にかき消されてしまった。それから数分後、私たちはサンセットに到着した。


「鉄さん。さっきなんて言ったんですか?」

私はバイクから降りて、ヘルメットを返しながら聞いた。


「あー……忘れた」

……忘れたって、鉄さん嘘つくの下手ですね。


鉄さんがバイクを押しながら奥の車庫へと向かう途中、私は勇気を出して問いかけた。


「……サクって彼女いるんですか?」


べつにさっきサクが好き?って聞かれたからじゃなくて、べつに私がサクの彼女になりたいからとかじゃなくて。

ただ単純にサクが恋をする姿が想像できないから。


「……いるけど、いない」

鉄さんはそんな意味深なことしか言ってくれなかった。