「……ねえサク。ごめんね。尚さんたちに居場所を教えたのは私なんだ」

怒られても軽蔑されてもいい。だって後悔はしてないから。サクはその言葉を聞いて、私の体に手を回した。


……許してくれるの?

泣いているサクに言ってあげたいことは沢山あるけど、カッコいい台詞は全部尚さんたちに言われちゃった。

だから、私は私にしか言えないことを言う。


「私はサクの味方だからね」

今まで何度も言ったこの言葉。この先なにがあっても変わらない。


「……うん。ありがとうノラ」

私はサクの背中を押してあげられたのかな?

サクともう少し早く出逢っていれば、なんて思ったこともあるけどきっと違うね。

私たちはあのタイミングだったから出逢えたの。

もしかしたら今日のために私はサクに出逢ったのかもしれない。サクの5年分の涙を見届けるために。


そのあとも私たちはなにも言わず抱き合った。

どこからか聞こえてくるメロディーは切ないけど、もう悲しくはない。

サクが次に生み出す曲はどんな曲なんだろうね?サクじゃなく、咲嶋亮が作るメロディーを私も胸に焼き付けたい。

いつか訪れる別れの時に、今度は私の背中を押してほしいから。