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仕事が終わり帰り道、私は家路への道をとぼとぼと歩いていた。


〝ねえ、亮がまだ歌ってるって本当なの?〟

あのあと私は深く頷き、鉄さんは「そっか」とひと言だけ言って涙を拭った。


もしかしたらこれはサクにとって隠しておきたいことだったのかもしれない。

ううん、きっとそう。


バンドを抜けた自分がまだ歌を歌ってるなんて鉄さんたちには知られたくなかったよね。

私はサクの味方でサクを守りたいはずなのに、
なんだか余計に苦しめてる気がする。


私がいることで今のサクの状況がどんどん明らかになって、サクはそれが嫌だから鉄さんたちと距離を置いたのに。

私は咲嶋亮の領域に踏み込み過ぎたのかもしれない。


サクの苦しみやサクの思い出したくないことを思い出させているのは私なんじゃないかな。

サクは優しいから言わないだけで、本当はすごく嫌な思いさせてるんじゃないかな。


「……はあ」

私は苦しくなる胸を手で押さえてため息をついた。