夏の月夜と狐のいろ。



広い教会を、走りまわってだいぶ経つ。


けれど、ノエルどころか人っ子一人見つからない。

シアンたちは疲労して、その場で立ちすくんでいた。


「アザリアは嘘を・・・?」


シアンはぽつりとつぶやいた。

そんなとき、すぐそばでナノがよろめいたのが見えて、シアンはあせってナノを受け止めた。


「ナノちゃん!?」


倒れこんだナノを見ると、真っ青な顔色にうすく汗が浮かんでいた。
ナノが、弱弱しく緑色の瞳を開く。


「ごめ・・・なさ・・・私、もう疲れてしま・・・って・・・」


そう言うとナノは目を再び閉じ、動かなくなった。


おどろいてシアンが見つめていると、ふわっとナノの姿が淡く光り、次の瞬間にはナノの姿はレオンのものへともどっていた。


支えていたナノの身体が急に重くなり、シアンはすこしよろめいた。


そしてぱちり、とレオンが目を見開く。


琥珀色の瞳が、揺れる。



レオンはゆっくりと身体を下ろすと立ち上がった。



「すまない。ナノはもう疲れてしまったようだ・・・」


シアンは、静かに頷いた。

もうアザリアに正体がばれているのだから、正体を隠す必要もないだろう。


・・・と、不意にシアンは感じるはずの違和感を感じない事に気がついた。


「ねえレオン・・・レオンって・・・」