夏の月夜と狐のいろ。



シアンはざわっとしっぽを開いた。


九つの尾が、ぶわりとアザリアをつつみ、そのまま上へと持ち上げて拘束する。


アザリアは一瞬電流で気絶していたようだが、もう目を覚ましすぐに赤い瞳に冷静ないろをもどしてこちらを見据えていた。



シアンが、慎重にきく。


『ノエルはどこにいるの?私たちはノエルを連れ戻しにきたわ。』

シアンがそういうと、アザリアはくすくすと笑った。

余裕たっぷりな表情は、まるで自分の今の立場をわかっていない子供のようだ。


アザリアは嘲笑するように言う。


「いるよ、この教会に。でも、会わない、あなたたちとは」


シアンはぎゅっとアザリアを締め付けた。
そんなわけない。ノエルは会ってくれるはずだ。


ノエルはこの町が嫌いなのよ!


『嘘。きっと会ってくれるわ。さっきとは状況が違うもの。
ノエルに助けてもらわなくったって私たちは逃げられる!』



シアンが言い切ると、アザリアは肩をふるわせて笑い続ける。

ようやく笑いやんだころ、やっとアザリアは返事をした。



「嘘かどうか、確かめてみればいい」


アザリアはそういって赤い瞳を横の部屋へとつづく扉にむけた。


リリィがちらっとこちらをみた。

シアンは頷き、一度アザリアを地面に下ろし、リリィの傍へ運ぶ。

そしてシアンは人間の姿にもどり、リリィの傍に立つ。

リリィはアザリアをつかみ、睨みつけた。
琥珀色の瞳がぐっと細くなる。



「わかりました。確かめさせていただきます。ただしあなたには眠ってもらわないと。」


リリィがいうとアザリアは頷いた。


「お好きに。」