夏の月夜と狐のいろ。



シアンは迷うことなく答えた。


「もちろん、ノエルを助けにいくわ。
ノエルはあの町の暮らしをひどく嫌っていたみたいだし、きっと苦しんでる。」


シアンがきっぱりというと、リリィは同意するようにしっぽを揺らした。


けれど、レオンは思い悩むような顔でこっちを見ている。

・・・何か問題でもあるのかな。


「どうしたの、レオン?」


シアンがきくと、レオンはふむ、とうなずいた。


「私たちは町の外に出されてしまっているようだ。きっとノエルの計らいだろう。
私たちはもう、町には入れない。」



シアンは驚いて辺りを見渡した。



なるほど、ここは町の中じゃないらしいことがわかった。
町のまわりをぐるりとかこむ壁が少し離れたところに見え、門番も見える。



「私たちに危険が及ばないように、これもまたノエルの計らいだろうが
私たちの容姿はチェックされ、町に入れないようになっている。」


「そんな・・・」


シアンはぎゅっと胸がしめつけられた。

ノエルは他人に優しい。
そんなノエルは自分には優しくなくて、自分を犠牲にしている。


-私たちが、ノエルに優しくならないとだめだわ。

シアンは思った。




『獣の姿もノエル様は知っていますし、それ以前に入れませんよね。』


レオンがこくりと頷いた。


「うむ。試しに私がさっき行ってみたが、青い目の銀色の髪の肩に黒狐をのせた少女、
琥珀色の瞳の茶髪の青年を中にいれるな、と言付けてあるらしい。

それにくわえて、私たちの獣の姿も言付けられている。」



シアンはしっぽをざわざわと揺らした。



「でも、私たちは狐よ。化けられるわ。」


そう言ってからレオンをちらりと見た。


レオンは、猫だ。化ける力などもちろん持っていない。

瞳の力を使ったとしても警戒している町だ。すぐに応援が来るだろう。



けれど、シアンの不安とは裏腹にレオンは余裕たっぷりの表情で言った。




「そうか、君達は化けられるのだな。
ああ、私なら大丈夫だ。私の中に、もう一人住人が居るのでな」


シアンとリリィは、首をかしげた。




もう一人住人がいる?それはどういう意味なんだろう?