夏の月夜と狐のいろ。



暗い暗い、そこの見えない闇の中にシアンは、居た。


言いようのない不安が波のように押し寄せてきて、シアンはふらついた。


けれど、すぐに立ち上がって走り出した。


逃げたい。この恐怖から逃げたい・・・・!



しかし、いくら走っても走っても暗闇と不安はシアンにまとわりつてはなれない。


怖いよ・・・!怖いよノエル!


「助けて・・・・!」



かすれ声で叫ぶと、ゆらりと揺れるノエルの姿が突然現れた。



「ノエルっ・・・・」



シアンはほっとして全身が震えるのを感じた。


ああ、よかった。やっぱりあれは夢だったのね!
まだノエルと旅を始めたばかりなんだから。お別れなんて、ありえない。



けれどシアンがノエルに飛びつくとノエルはそれに答えることなくシアンに背を向けた。


シアンがぎょっとしてノエルを見つめると、ノイズが走るようにノエルの姿が歪んだ。


そして、悲しげに微笑む。



「さよなら、シアン。」



その言葉は何度もよみがえり、シアンの心を不安で満たした。



「行かないで!お願い!!!やだよ、お別れはもう嫌なの・・・・!」


森での仲間との別れが、頭によぎる。





「やだ・・・!やだよ・・・・・!!!」





叫び声とともに、暗闇ははじけて消えた。