夏の月夜と狐のいろ。


・・・だめ!

シアンはそう叫ぼうとした。

けれど、麻痺した体はもはや声を出す事すらできなかった。


薄れ行く意識の中、会話が続く。



「そうですか・・・・!本を自在に操れる魔術師など希少の中の希少!
この異端者たちを逃す事くらい、どうってことはないのですよ、ノエル!」


神父はさっきまでとは打って変わり、高らかに話す。

それに対するノエルの声音は、冷たくて暗い。


「・・・・そう。じゃあ約束だ。シアンたちに解毒剤を与えて外へ逃がしてね」



だめ・・・・!いやだよノエル・・・!
頬を流れ落ちる涙が床に落ちて、シアンはぎゅっと力をこめた。


かすれ声で何とか声を出す。


「お願い・・・・行かな・・・いで・・・」


喉が焼けるように痛いが、それよりもさらに心臓がどくどくと脈打って痛い。

シアンの中に、ノエルと離れ離れになるかもしれないという不安がこみ上げていた。




シアンのその声に、ノエルが振り向く。


そして、シアンは頭をゆっくりと抱きかかえられて、ぎゅっと優しく抱きしめられた。


藍色の髪が、ノエルの肩の震えにあわせて揺れる。



「ごめんね、シアン・・・・・でも俺はシアンを守りたいから。」



そして、ノエルは抱きしめていた身体を少し離すと涙目の藍色の一人をこちらに一度向け切なそうに微笑んで、シアンに軽くキスをした。

そのぬくもりが離れて、そして。





「さよなら、シアン」






そこでシアンの意識は途切れた。