夏の月夜と狐のいろ。




『大丈夫ですか!?』

リリィが不安そうにこちらを見た。

シアンはうなずき、再び前を見据える。


そこには半分、龍のような身体になったアザリアがいて、顔にはうっすら笑みを浮かべていた。

小柄な少女のような容姿とは裏腹にそこにあるのは人魚のように下半身が龍の神々しいもの。

目が赤くきらめき、その尻尾でノエルを持ち上げた。


クロはさっとナイフをひき、再びその場でうつむいた。


じっと、ナイフについたノエルの血を見つめるだけで相変わらずこちらをみない。



シアンが立ちすくんでいると、リリィが肩から飛び降りて戦闘態勢に入った。



アザリアはにっと笑ってぎゅっとノエルをしめつけた。ノエルの骨がきしむ。



シアンは悲鳴をあげそうになりながら神父をにらみ付けた。



神父はその様子を神々しいものでも見るかのように、崇拝して胸の前で手をくんで見つめている。


けれど、シアンの視線に気がつくとそれをやめてあやしく笑った。


「さあ、どうします」


シアンは震えながら後ろに下がった。


どうしようにも、ない。



ノエルを助けるか自分達が捕まるか。


厳しすぎる選択がふたつ、そこにはあった。