夏の月夜と狐のいろ。



シアンは呆然とクロを見つめた。

けれどもうクロはこちらを見ないし、外套に隠れた顔から表情を読み取る事もできない。



そして、そうしている間にも神父がこちらに歩み寄っていた。


『・・・シアン様!』


耳元でリリィが鋭くうなる。

シアンは抱えられていたレオンの腕から身体をおこし、頭を振ると前を見据えた。


今はノエルを助けてここから脱出しなければ。


シアンはじりじりと後ろに下がりながら、銀色の尻尾を自分達を守るように構えた。



レオンも後ろ手に小さなナイフを構えて戦う準備をしている。



「さあ、おとなしくこちらにきなさい・・・」



神父は少し警戒するようにその場でぴたりと足をとめて、苛立ちを含んだ声でそう言った。



「あんたたちの言うことなんかきかない・・・!」


シアンはそれに対して鋭く返し、きらりと尻尾の先を神父に向ける。


すると神父は深くため息をつき、怒り出すという予想に反してあげた顔は笑みを浮かべていた。



「ノエル様がどうなってもいいんですかな?」


「・・・!」


ばっとノエルのほうを見ると、クロがノエルの喉元にナイフをあてがっていた。