神様修行はじめます! 其の二

あたしは黙ってそれを見守る。

まばたきすら忘れて目の前の光景を、食い入るように見つめる。

見届けなければ・・・。

この結末をあたしは見届けるんだ。


祈るような気持ちだった。


プツンと音を立てて途切れそうなくらい意識が集中していて。

そのくせ、心は不思議に落ち着いていた。

とても静かな心で、目の前の光景をあたしは見守っていた。



門川君が、床の上の自分の血で足を滑らせた。

ガクリと前のめりになる。

奥方の前に、首を突き出すような形になった。

断頭台の前に首を捧げるように・・・。


奥方の血走った両目が爛と光った。

血に染まった扇子が振り上げられる。



前のめりになったままの姿勢で、門川君が思い切り刀を奥方に突き出した。


とっさに振り下ろされる扇子。

奥方の体に届く直前、刀は扇子に止められた。


勝ちを確信した女の笑み。

お歯黒のように赤黒く染まった歯が見えた。

奥方はもう片方の扇子を高く掲げる。

ギラリと狂気の走る目が、門川君の無防備な首を狙っていた。



彼の刀の切っ先が、くぃっと上方に向いた。


刀を止めた扇子の下を掻い潜るように、それはスゥッと上に向かって滑る。


ずんっ・・・

と、衝撃が聞こえたような気がした。



門川君の刀は・・・


深々と奥方の腹の上辺りを貫通した。