神様修行はじめます! 其の二

「おのれぇ、あの時お前を殺しておくべきであった」

ぎゅっと扇子が握り締められる。


あたしはヒューヒューと細い息をして、痙攣していた。

体が固まってしまって全然動かない。

まるで麻痺しているようだ。

まぶたすら動かない。


開ききった両目で、奥方がよろよろと目の前に立つのを見ていた。

ゼエゼエと息を切らし、赤く血走った目であたしを凝視している。

両手がふわりと動き、奥方の頭上に扇子が掲げられる。


「わらわが、天内最後の末裔に天誅を下そうぞ」


頭の中が真っ白で、体も動かなくて・・・。

何ひとつ考えられない。動けない。

あの扇子があたしに狙いを定めているというのに。

動け、ない・・・。


「ここで途絶えよ! 天内の血脈よ!」


ズンッ・・・!


叫んだ奥方がそのままの姿勢で硬直した。

驚愕の表情。

ばらりと長い黒髪がほどけ、腰まで覆う。

そして弛緩したようにカクンと両膝を畳につけ、ぱたりと横に倒れる。


奥方の首筋から背中にかけて、袈裟懸けに深い刀傷が。

血がじわじわとあふれ出すのが見えた。


「門・・・」

その向こうに、彼の姿。

赤く血塗れた刀を畳に突き刺し、それにすがり付くように体を支えている姿が。

見えた。