神様修行はじめます! 其の二

彼の肩越しに、お兄さんの姿が見える。

もうすぐそこまで近づいている。


「お願いだから逃げて! 逃げて!」


門川君・・・あなただけは生きなければならない。

なにを犠牲にしても。

あたしの命を引き換えにしても。

それを受け入れて、生き続けなければならない。


ここであなたが死ぬ事は許されない。そんな事はあたしが・・・


「あたしが許さない!」


渾身の力を込めて、あたしは彼の頬を平手打ちした。

パ―ンと大きな音がして、門川君の体がよろめく。

あたしは彼の腕と襟をつかみ、自分の体ごと彼を畳に思い切り投げ倒した。


激痛が走り、胸に生ぐさい臭いが込み上げる。

たまらずに吐いた。

派手な音と共に倒れた彼の体に、あたしの赤い血が散った。


口元を腕でぬぐい、よろめきながらあたしは立ち上がる。

門川君・・・約束だったね。

あなたが間違った選択をしたら、引っ叩いてでも止めてみせるって。

約束、守ったからね。

次はあなたが・・・皆と自分自身との誓いを守って。


あたしは、残る力の全てでお兄さんに飛び掛ろうとした。


最期に・・・滅火の力を・・・!

この命の炎の全てで彼を守りきる!


じー様! 天内の英霊達!

どうかあたしに力を・・・!


世界を守る一族の誇りにかけて、あたしに成すべき事を成させて下さい!!